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淡い夢のなかで…

風の使い手



畏怖するものの存在を知る。

阿蘇芳が、東北での武者修行から帰ってくるという。彼とは幼馴染だが、まだ幼い頃から、近づくだけで総毛立つような恐ろしい鬼の気配を感じた、あの阿蘇芳が。

7歳のころから東北へ修行へ行っていたから、14歳となった今とは、7年も修行をしていたということになる。

会わなくなってから7年も経つのか…

彼は一体とんな風に成長しただろう。あの心の中を見透かすような、鋭い目つきを思い出す。

覚悟しておかなければ…

これから、相棒になる間柄である。彼がどんなふうに成長したか分からないが、彼に見合うだけの力を培ってきたはずだ。いささか体は弱いが、彼の力を十分に引き出せるようでなければならない。

それに…もし

ふ、と修行の場所である、華厳の滝で、幼い阿蘇芳に何度もキスされたことを思い出す。

あの頃のままだったら、それを咎めなければならない。

人の心に巣食う恐ろしい鬼を退治しなければならない、秘道で重要な役割を担うからには、甘い夢はもう見ていられない。

涼はすうっ…と前を見据えた。

あのころとは違うんだ…阿蘇芳と同じく14歳になった涼は、年よりも大人びて見えた。

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